えっちなはなし

「芸術か猥褻か」ってもう古いよ。逮捕された「ろくでなし子」さんのまんこ3Dデータは猥褻じゃなくて社会的有用物です

ろくでなし子

わたしが沖縄でバカンスしていた間に「ろくでなし子」さんが逮捕されていてビックリしたので、遅ればせながら書いておきます。

まず、ろくでなし子さんは、女性器の社会的開放を訴えて女性器を型どったアート作品などを発表している芸術家です。
「自称芸術家」と報道されていましたが、何冊かの本を出版して個展も開催しているれっきとした芸術家です。


ろくでなし子さんの著書「デコまん」

自身のまんこ3Dデータを使って女性器型ボートを作り、制作活動を支援してくれたひとに3Dデータを渡していたのですが、今回そんなプロジェクトが「わいせつ図画頒布容疑」だとして逮捕されてしまいました。
現在では釈放されていますが、今後起訴される可能性もないわけではありません。

が、まんこ3Dデータって猥褻なんでしょうか。
過去の判例をひっぱりだして、ろくでなし子さんのまんこ3Dデータが猥褻ではないことを証明したいと思います。

そもそも「猥褻」ってなに?

芸術か猥褻かっていう論争は長年繰り返されてますね。
そもそも猥褻ってなんなんでしょう?ってことで、「チャタレイ夫人の恋人」事件で定義された「猥褻」がこちらです。

① 徒に性欲を興奮又は刺激せしめ
② 普通人の正常な性的羞恥心を害し
③ 善良な性的道義観念に反する

上の3つを満たしたものが、逮捕に値する猥褻物になります。

そもそもこの定義がおかしい。
「性欲」と一口に言っても、何に性欲を掻き立てられるかは人それぞれです。
万人の性欲を掻き立てる表現なんて存在しないし、逆に万人の性欲を一切掻き立てない表現も存在しません。

また、「普通人」っていうのがどういった人物を指して、「正常な性的羞恥心」っていうのが何から何を「正常」だと指しているのか謎。
さらに、「性欲」は快いものなので、性的羞恥心が害された場合は不愉快な気持ちになるから「性欲」が催されないという指摘もあります。(中山千夏さんが「猥褻の研究」の中で指摘してます)

過去の裁判でも「そもそもこの定義どうなの?」っていう話は度々出ていますが、現在でもこれが決まりになっています。

芸術ではなく猥褻とされた過去の3判例

D・H・ロレンス「チャタレイ夫人の恋人」

1957年:翻訳者・伊藤整、発行者・小山久二郎に有罪判決。
作品の芸術性は認められながらも「猥褻」は芸術とは別次元のものだとして、性器及び性行為の描写があるだけで有罪。

マルキ・ド・サド「悪徳の栄え」

1969年:翻訳者・澁澤龍彦、発行人・石井恭二に有罪判決。
出版当時、イギリスで法改正があり「チャタレイ夫人の恋人」が解禁されたため、日本でもチャタレイ裁判の時より規制が少しゆるくなりました。
チャタレイの時とは違って、「文書の一部に性器及び性行為の描写があったとしても作品全体の趣によってはOKだよ」としながら、それでも「悪徳の栄え」は通常人の性欲を刺激興奮させるに足るとして有罪。
性行為うんぬんよりも内容の残虐性を指摘されていたのが特徴かと。

永井荷風「四畳半襖の下張」

1973年:編集長・野坂昭如、社長・佐藤嘉尚に有罪判決。
サド裁判同様、作品の社会的有用性の有無を議論した上で、あたかも目の前で行為が展開されているかのような扇情的な雰囲気が性的好奇心を挑発するとして有罪。

今では上の3作品すべて日本での販売が許可されていますが、このように「猥褻がなにか」という万人が納得するような答えがないまま作品が封印されてしまう時代があったんですね。

社会的有用性があるかどうかが鍵

「四畳半襖の下張」裁判で有罪かどうかの判断基準になったのはこちら。

その文書の内容に芸術的、思想的、学問的等の重大な社会価値が認められるものである場合には、その芸術性、思想性などにより当該性表現の性的刺激ないし印象が昇華、克服されているかどうか

つまり「社会的に価値あんの?それ」と。

性器といえば、日本では性器を祀るお祭りもたくさんありますね。
でっかい男根の神輿が練り歩く「かなまら祭り」や、お多福の口が女性器になってる「姫の宮 豊年の祭」など。
あれらもモロ性器ですが、特にお咎めがないのは子宝や豊作を祈るための「社会的有用物」だからです。

まんこ3Dデータは社会的有用物?

ろくでなし子さんのまんこ3Dデータに社会的価値はあるのか。
社会的価値つまり今回であれば「芸術作品」にあたるのか、と。

結論から言えば、芸術家のろくでなし子さんの作品の一部なんだから、もちろん芸術作品です。
女性器のタブーを無くしてみんなが生きやすい社会にしていこう、という思想をもった芸術作品です。

警察は3Dデータに社会的有用性がない前提で捜査を行っているので、ろくでなし子さんの肩書きに「自称」をつける。自称芸術家。
「自称」って恣意的で嫌な言葉だなと、今回のことで思いました。

3Dデータ取り締まりのための見せしめ?

今回の逮捕は、今後の3Dデータ関連の取り締まりを想定した判例作りにしか思えません。
技術的には誰でも自分の性器をスキャンして3Dデータを配布できちゃう世の中ですから、そういうことが相次いだ時に有罪の前例があれば取り締まりやすいし、警鐘にもなるでしょう。

とはいえ、そもそも性器を規制して何になるのか。
チャタレイの時代では禁じられていた性行為の描写を許可し、ヘアヌードを許可し、ぜんぶ許すわけにはいかないからとりあえず性器にモザイクかけとこ、みたいな。
時代が変わっているのなら、猥褻の定義とその規制対象も見直すべきじゃないでしょうか。

とりあえず「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ」、「普通人の正常な性的羞恥心を害し」、「善良な性的道義観念に反する」ものを規制するなら、みんな持ってる性器じゃなくて無遠慮なエロバナー広告を規制してください。